魔法にかけられて
Story
アニメの国アンダレーシアに暮らす心優しいプリンセスのジゼル(エイミー・アダムス)は悪い魔女に井戸に突き落とされるがそこはなんと現代のニューヨーク。そこでジゼルが出会ったのはバツイチ・子持ちの弁護士ロバート(パトリッ ク・デンプシー)。ジゼルは夢や希望を信じないロバートに永遠の愛を伝えようとする。そのころジゼルの婚約者エドワード王子(ジェームズ・マースデン)も彼女を救うべくニューヨークにやってくる…Cast
エイミー・アダムス:ジゼルパトリック・デンプシー:ロバート・フィリップ
レイチェル・カヴィ:モーガン・フィリップ
スーザン・サランドン:ナリッサ女王
ジェームズ・マースデン:エドワード王子
ティモシー・スポール:ナサニエル
イディナ・メンゼル:ナンシー・トレメイン
サマンサ・アイヴァース:ナンシー
ジュリー・アンドリュース:ナレーション
Staff
製作:バリー・ソネンフェルド,バリー・ジョセフソン監督:ケヴィン・リマ
脚本:ビル・ケリー
撮影:ドン・バージェス
音楽:アラン・メンケン
Goods
Notes
ディズニーは経営の建て直しのためキューティー映画の製作をここ数年抑えてきました。そのディズニーが久々に出してきた大型キューティー映画は、これまでのディズニー・アニメのプリンセス物自体を実写でパロった作品ですが、愛情あふれるオマージュが細かく色々配置されていて、実に楽しい映画になりました。
結果的には大ヒットで主題歌他3曲がアカデミー賞にノミネートされました。
監督のケビン・リマは元々ディズニー・アニメの監督で、実写映画は『101匹ワンちゃん大行進』の実写版続編『102』を監督しています。
VFXにはストップモーション・アニメの第一人者フィル・ティペットのティペット・スタジオを中心に、Wetaデジタル、CISハリウッドの名が連なり、特殊メイクはマイケル・ジャクソンの「スリラー」『狼男アメリカン』などベテランのリック・ベイカー。
音楽は『リトル・マーメード』『美女と野獣』など90年代ディズニー映画を支えたアラン・メンケン。
ディズニーで久々に復活した手描きアニメパートは、『美女と野獣』『スピリット』で素晴らしいアニメーションを披露したジェームズ・バクスターのスタジオが担当。
バクスターは元ディズニーで、その後反ディズニーのドリームワークス * 1 で『スピリット』を作っています。そのバクスターが外注としてディズニーのアニメを作る * 2 というのは、アメリカの2Dアニメ事情を色々考えさせられます。
アニメパートは後にキャラクターが実写になることを想定してか派手な動きを若干抑え気味。ただ、エドワード王子が木の幹を馬でくぐるところや歌のラストで草原に馬に乗った2人がいるところなど、レイアウトには若干難があったと思います。逆に実写になってからのジゼルやエドワード王子たちの動きが、アニメーションのような若干オーバーアクトなのが面白いです。
ジゼルの動きのように、この映画、とにかくディズニー映画のオマージュやパロディーが多くあります。
黒人のバスのおばさんのヘアースタイルがミッキーマウス、ヒロインの相手役の娘が無意味にウェンディーの格好してたりと、あちこちに小さな色々な遊びがあります。とても多くて書ききれませんが、一部をご紹介します。
アニメパートで青い鳥が必ず飛んでるのは『白雪姫』のオマージュです。というか、この映画自体が『白雪姫』のオマージュのようなものですね。ジゼルの「7人の小人たちに聞かなきゃ。」と言ったセリフもありましたし、ジゼルの歩くときの手の動き、腰の感じなどは明らかにディズニーの『白雪姫』の動き * 3 です。
ジゼルが部屋を掃除する「Happy Working Song」シーンで鳩がスカートをもつのは『シンデレラ』のオマージュです。
プリンセス・ジゼルを探すエドワード王子がマンションの部屋を一つ一つ訪ねていくシーンがあるんですが、最初に出てくる子沢山の妊婦は『ポカホンタス』の主題歌を歌ったジュディー・キーン。別の部屋の番号が「714」なんですが、これはカリフォルニア・オークランドにあるディズニーランドの電話番号のエリアナンバー。
ティモシー・スポール演じる従者のナサニエルはイタリアンレストラン「ベラ・ノッテ」(『わんわん物語』の曲名ですね)ではひげのシェフの格好を、タクシーではアラジンの格好をしたりしてます。
ラストのダンスシーンで『美女と野獣』と同じカメラワークがありました。シャンゼリアをなめて降りてくるとても有名なカメラワークです。
そういやアニメパートで緑色のトロル(巨人)が出てくるんですが、これ、ディズニー作品のカウンターである『シュレック』の主人公に見えるのですが(笑)
エドワード王子が魔法の鏡と勘違いするTVニュース、そのTVリポーターの名前は「メリー・アイリーン・カセロッティ」というんですが * 4 『眠れる森の美女』の声優メリー・コスタ、『シンデレラ』の声優アイリーン・ウッズ、『白雪姫』の声優アドリアーナ・カセロッティのそれぞれの名前を合わせたオマージュでした。細かいわ!分かるか!(笑)
ヒロインを助ける男性、パトリック・デンプシー演じるロバートが勤める法律事務所のアシスタントの女性は『リトルマーメード』のアリエルの声優ジョディ・ベンソン。
ジェームズ・マースデン演じるエドワード王子が安ホテルで見るTVの昼メロは『美女と野獣』のベルの声優ペイジ・オハラとルミエールの声優ジェリー・オーバックが出ていて、ベッタベタのくっさい演技をしてます。
エドワード王子がバスの屋根に乗って剣を突き刺すシーン、後ろに映ってるポスター群がジェームズ・マースデンの出た『スーパーマン・リターンズ』『ヘアスプレー』ですね。同じくロバートの婚約者、ナンシー役のイディナ・メンゼルが出演しているミュージカル『レント』『ウィケッド』の看板もあります。
BGMにもさりげなーく、様々なディズニーの名曲の1フレーズを薄っすらと、しかし明らかに入れてきます。「星に願いを」の一瞬のフレームの出し方とそこからテーマ曲への繋ぎ方はうまかったなぁ 。感動しました。
エンディングはシルエットですが、ディズニー・プリンセス総登場です。
その中でもメリー・ポピンズの出し方がちょ~~~イキでした。
誰もがメリー・ポピンズで連想する「傘」じゃなく「かばん」というのがいいです。ちなみにナレーションは『メリー・ポピンズ』のジュリー・アンドリュースです。
リスのピップがニューヨークに来てからリアルなリスになってしゃべれなくなり、ずっとジェスチャーで大活躍するのですが、CGを担当したティペット・スタジオのアニメート技術の高さと独自性が見事に出ていました。
ティペット・スタジオのアニメートは、ディズニーのアニメーションから流れを汲むフルアニメ的オーバーアクションではなく、動物の仕草を活かしつつ芝居付けをするので擬人化してもナチュラル。
他にも都会の生き物がジゼルに呼ばれて部屋を掃除する「Happy Working Song」シーンの鳩のステップする動き、ネズミが皿拭きする動きなどでもティペット・スタジオの良さが活かされていました。
実写のプリンセスを演じたエイミー・アダムスは撮影当時33歳。顔のアップの目じりの皺、二の腕のたるみなどちょっと年齢を感じさせ過ぎるかなとも思ったのですが(笑)オーバーアクションの演技もさまになって、声、歌がとてもクラシカルでかわいく、物語の最後は最近の世相を反映してか、果敢に戦って男を守るプリンセスを演じていました。
セントラル・パークの歌のシーンは非常に素晴らしいです。歌の入り方もいいし、曲の展開と画面の展開がシンクロしているのもいい。おじいさん、おばあさんの軽やかなステップもかわいいし、新郎新婦の優雅な踊りもいい(エイミーの顔のアップからパッと広がるところは編集でうまくテンポを作っています。)、映画の前半ですが、この映画のハイライトです。
ちなみに、このシーンで踊っているおじいさんたちの中に『メリーポピンズ』の「Step In Time」シーンで踊っていた煙突掃除ダンサーの人がいます。こういう起用の仕方はほんとシャレてますね~
さらに!ジゼルの歌につられて加わるひげ面&カーボウイハットのギターリスト、80年代に8フィンガー奏法でその名を轟かせた元ナイト・レンジャーのジェフ・ワトソンです。エンドロールには本名の「Jeffery Watson」でクレジットされています。
この映画、アニメパートから実写パートにかわるところでスクリーンサイズがビスタからシネスコに変わるんですね。
昔『宇宙戦艦ヤマト ヤマトよ永遠に』という作品で「脅威のワープ・ディメンション方式 * 5 !」と呼んで同じようなことをしてましたし『踊る大走査線2』でも同様の演出 * 6 をしていましたが、共にスクリーンサイズの変更と共に世界がドーンと広がって非常にいい効果を生んでいました。
けどこの映画はその効果がわかりにくい…。アニメの世界と繋がってるリアルな世界の土管の中でのシーンが長すぎるんですね。暗いからスクリーンサイズの変更がされてても効果が薄い。
アニメ世界のシーン→真っ暗→恐る恐る蓋をあける→(スクリーンサイズ変更)広がるNYの街並み
という方がスクリーン・サイズの変更が演出的に効いたと思うんですが。
とにかくまだまだ書き足らないくらい、ディズニーが往年のアニメーションに敬意を表しつつ、自らの世界をネタにした楽しいキューティー映画です。ここに書いた以外の遊びやオマージュはまだまだあると思います。それを発見するのもこの映画の楽しみの1つかもしれません。
* 脚注 *
- ドリームワークスを創設したジェフリー・カッツェンバーグは『美女と野獣』などをヒットさせディズニーを復活させたにもかかわらず、当時ディズニーの最高責任者のマイケル・アイズナーに首にされ相当恨んでました。すぐに作ったドリームワークスはことごとくディズニー配給のピクサーと同時期に3Dアニメの公開をぶつけましたし、何より『シュレック』を見れば反ディズニーであることがわかりますね。 [↑Back]
- ディズニー自体は、2Dアニメ部門を一度破棄したのですが、2006年、アニメ部門の最高制作責任者になったピクサーのジョン・ラセターの発案で2Dアニメ部門を復活させて2008年現在制作体制を整えています。 [↑Back]
- ジゼルのつまむような仕草の手の動きは明らかにディズニー・プリンセスのアニメ演技のパロディーですが、『白雪姫』は実際の俳優の演技をアニメに置き換えた「ロトスコープ」という技法のフルアニメーションなので、常に体のどこかが動いている感じになっています。 [↑Back]
- レポートの最後に名前を言います。 [↑Back]
- 音もモノラルからステレオに変わって合唱曲になるし、二重銀河の大きさ・美しさ・存在感がスクリーンで出てました。 [↑Back]
- オープニングでヘリコプターがアップからロングになって飛び去るに従ってスクリーンサイズも変わります。 [↑Back]












