カテゴリー:cue Review, 【ハ行】, コメディ, ダンス, ティーンズ, ファッション, ミュージカル, リメイク, 作品情報, 学園物, 家族, 恋愛, 音楽

Hairspray(2007年 アメリカ 日本公開)
Story
1962年黒人差別がまだ残るボルチモア。デブだけどダンスが好きな16歳のトレーシー(ニッキー・ブロンスキー)の夢は人気テレビ番組に出演し憧れのリンク(ザック・エフロン)と踊ること。ある日、彼女は番組のオーディションに参加し見事に合格し人気者に!しかし番組プロデューサーのベルマ(ミシェル・ファイファー)はトレーシーの人気が面白くない。一方トレーシーは学校で黒人グループにダンスを教わり意気投合する…
Cast
ニッキー・ブロンスキー:トレーシー
アマンダ・バインズ:ペニー
ザック・エフロン:リンク
イライジャ・ケリー:シーウィード
テイラー・パークス:アイネス
ジェームズ・マースデン:コーニー・コリンズ
ジョン・トラヴォルタ:エドナ
クリストファー・ウォーケン:ウィルバー
クイーン・ラティファ:モーターマウス
ミシェル・ファイファー:ベルマ
ブリタニー・スノウ:アンバー
アリソン・ジャネイ:ペニーの母
ジェリー・スティラー:Mr.ピンキー
リッキー・レイク:エージェント
ジョン・ウォーターズ:オープニングの変質者
Stuff
監督:
アダム・シャンクマン
脚本:
レスリー・ディクソン、
ジョン・ウォーターズ(オリジナル版)、
マーク・オドネル(ミュージカル版)
製作:
クレイグ・ゼイダン、
ニール・メロン
撮影:
マイケル・トロニック
音楽:
マーク・シェイマン,
スコット・ウィットマン
Goods
ヘアスプレー
著者/訳者:トーマス・ミーハン マーク・オドネル レスリー・ディクソン
出版社:ゴマブックス (2007-10-17)
映画の元となったミュージカル版です。
全てのもと。オリジナル版です。
Note
ミュージカル映画は正直いって苦手です。
歌や踊りのパフォーマンスやそれを捉えるカメラワークは観ていて楽しいものの、やはり話の流れの途中で唐突に歌われるのはチョット…
とにかく肌に合いません。
この作品も、いくらジョン・トラボルタが女装しようが、ミシェル・ファイファーとトラボルタがグリース2以来のミュージカル共演をしようが、キューティー映画っぽくなければ映画館に足を運ばなかったと思います。
そんな人間がこの映画を観てどう変わったかのドキュメントです(笑)
オープニングでカメラは空から降りてきて60年代のアメリカの街の朝の風景を映しだします。
カメラが街に近づくにつれ犬の鳴き声、車のクラクション…街が、人々が動き出そうとする様々な音が聞こえてきます。
その様々な雑音が絶妙にリズムを成してイントロとなり、オープニング曲のメロディーへと繋いでいきます。
ここの音響演出でガーンとやられました。見事です。
そしてカメラは主人公のベッドへ。
主人公のデブッチョ、トレーシーが起きて歌が始まります。ミュージカルらしい始まり方です。
そして歌の最初のサビのところで、トレーシーがつけたTVの中の人の台詞「Good Morning Baltimore〜」とサビの歌詞を微妙にシンクロさせるところでさらにガーン!!
まいった〜〜〜!!!!なんかこの映画いいじゃないか〜!!!
映像と歌をシンクロさせる演出が実に映画的です。これは「ミュージカル」ではなく「ミュージカル映画」なんだと強く印象付けられました。
さらに、トレーシーは歌いながら外に出て学校に向かいます。変質者役でオリジナル版の監督ジョン・ウォーターズを出すなんて、とてもシャレたリスペクトの仕方!感動しました。
もうこのオープニングは圧巻です。こんなにテンションが高く感動的なオープニングは久々です。
歌の最後のほうで遅刻しそうなトレーシーを乗せるトラックの運転手を、トレーシーが荷台から降りるときと降りて手を振るときの2回、わざわざインサートします。とても映画的演出です。ミュージカルをそのまま映像に収めてスクリーンに映していませんし、ミュージカルを舞台ではなく外で撮って映画としているわけでもありません。
話の進行はミュージカル的でもカットの積み重ね方が実に映画的です。
(ちなみにこの歌のラスト、主人公が歌う後ろで本を落とす学生にわざわざ効果音を付けていますがなぜ??どういう意味が隠されているのでしょうか??)
監督はジェニファーロペス&マシュー・マコノヒー主演のキューティー映画、『ウェディング・プランナー』のアダム・シャンクマン。元々この人は振り付け師で、初監督作品の『ウェディング…』でも野外映画のシーンで往年のダンス映画を映したりしてミュージカル映画へのリスペクトをしていました。
『キャプテン・ウルフ』も監督してたけど、ぶっちゃけ演出は凡庸だと思ってました。
今回は見事にこの人の起用がはまったと思います。
ちなみにアンバー役のブリタニー・スノウは『キャプテン・ウルフ』がデビュー作です。
この映画は1988年公開のオリジナル版があり、それをミュージカル化しそのミュージカルを映画化したわけですが、オープニングの変質者役のジョン・ウォーターズをはじめ、婦人服屋のピンキー氏にオリジナル版でお父さん役を演じたジェリー・スティラー
*
、ラストのダンスコンテストのシーンにいるエージェントの一人にはオリジナル版のトレーシーを演じたリッキー・レイクがいるなど、オリジナル版への愛情が隅々に行き渡っていてとても素晴らしかったです。
同時に音楽はミュージカル版のマーク・シェイマンを起用し、基本的にミュージカル版をリスペクト。映画独自の展開をもとに音楽も追加されたり編曲されなおしたりしています。
余談ですが、オリジナル版の監督ジョン・ウォーターズも、リメイク版の監督のアダム・シャンクマンもいいところ出の坊ちゃんでゲイという共通点があります。
アダム・シャンクマンのダンス映像演出はとてもかっこよく、特にラスト、大団円のときに歌われる「You Can't Stop the Beat」のクイーン・ラティファが歌って退場した後のダンスシーンの1カットは必見です。
女性ダンサーを高く持ち上げている手前に、低い位置から切れのある回転をする男性ダンサーを2人配置し、それを低位置から撮っている短いカットなんですが、パッと差し込まれることで映像にメリハリもついてこれがとてもかっこいい。2つの異なるダンスを1フレームに収めることで、立体的で多彩な動きとスピード感(高揚感)を感じる見事な画を作っています。
(9:42〜)
オープニングの「Good Morning Baltimore」からラストの「You Can't Stop the Beat」まで、楽曲の完成度がどれも恐ろしく高く、ロックンロール、ゴスペル、R&Bなど60年代サウンドの懐かしい感じがするものの今風のリズムも巧みに組込まれていて(特にベースラインは今風)、テンションが高くノリがいいです。 ストリングス・アレンジがとてもきれいで映画音楽的。
これが純粋に60'sミュージックのオンパレードだったら観客を選んでしまったでしょうね。
音楽でも遊びがあります。
ジョン・トラボルタとクリストファー・ウォーケンの夫婦(笑)が優雅に激しくそして優しく踊るシーン
*
の曲「(You’re) Timeless To Me」では、ラストのほうで有名なシャンソン「バラ色の人生」
*
のメロディーがスーッと入ってきます。(4:09〜)このシーン、往年のMGMミュージカルの再現を意図した
*
、とても素晴らしいダンスシーンです。ちょっとあおり気味のアングルで夜空の星と流れ星を合成するあたりも実にニクイ。
悪役を一手に引き受けるミシェル・ファイファーがかっこよすぎです!! 歌のシーンの笑い方とか存在全てがサイコ〜です!
キャット・ウーマン役もかっこよかったけど、若かりし頃、審査員と寝てまでして獲得した「ボルチモア蟹女王
*
コンテスト」を今でも自慢する小市民的なビッチTVプロデューサーを貫禄十分に美しく演じていました。
公開前から特殊スーツ&メイクで話題になっていた母親
*
を演じるジョン・トラボルタがただの出オチではなく、ちゃんと演技、歌、踊りとプロの芸をきっちり披露して意味のある出演になっていたのには驚きました。
ジョン・トラボルタ演じるお母さんが娘に引っ張られてずっと篭っている家から出て、徐々にはじけていく「Welcome To The 60's」が歌われるシーンは、トラボルタの演技(ダンスではなく演技)が素晴らしく、実に感動的。
作品のテーマは「偏見をなくす」ですが、僕自身もこの映画でミュージカル映画への偏見がなくなりました。
映画館で観てよかった。本当に観て良かった。
大傑作です。
とにかく、この映画は恐ろしくハイテンションでテンポよく、見終わった後の幸せな恍惚感は異常です(笑)
* 脚注 *
- ベン・スティラーの父 []
- トラボルタがウォーケンに吹き付けるアイロンの煙のCGの出来は酷いですが(笑) [