ラブソングができるまで
Story
アレックス(ヒュー・グラント)は80年代に一斉を風靡したポップスターだったが今は往年のファン相手に余興にまわる日々。ある日人気アイドルのコーラ(ヘイリー・ベネット)から曲の依頼がくる。しかしいい詞が浮かばない。そんなとき彼のアパートにバイトで来ていたソフィー(ドリュー・バリモア)の口ずさんだ詞の素晴らしさに、アレックスはソフィーに作詞をお願いする。渋々詞を書き出すソフィー。曲は何とか完成するが…Cast
ヒュー・グラント:アレックスドリュー・バリモア:ソフィー
ヘイリー・ベネット:コーラ
ブラッド・ギャレット:クリス
クリステン・ジョンストン:ローンダ(姉)
Staff
製作:マーティン・シェイファー、 リズ・グロッツァー監督:マーク・ローレンス
脚本:マーク・ローレンス
撮影:ハビエル・ペレス・グロベット
音楽:アダム・シュレシンジャー
Goods
Notes
キューティー映画の代表俳優、ヒュー・グラントとドリュー・バリモアの初共演作品です。監督・脚本は『トゥー・ウィークス・ノーティス』の監督・脚本、『デンジャラス・ビューティ』の脚本など、テーマが面白い巧みなキューティー映画を作るマーク・ローレンス。
この布陣だと何の不安もありません。しかもネタは80年代音楽と曲作りにまつわるドラマ… 個人的に好きな要素満載です。日本公開を心待ちしていました。
しかしマーク・ローレンスはどうしたのでしょう?この人、脚本家出身らしくアイディアはいいのに演出は単調で今ひとつ、という印象だったのですが、この作品での演出は実にお見事。
さらに不安だった邦題も実に見事なタイトルがつきました。
最近のキューティー映画は邦題が散々なのですが、この映画の邦題はぶっちゃけ原題よりずっと素晴らしいと思います。
見るまではヒューとドリューがひとつの曲を作っていく過程で、お互いの仲が深まったり対立したり和解したりしていくストーリーなのかな、と思っていたのですが、曲は比較的スムーズに中盤あたりで出来上がってしまいます。
むしろ、そこからの展開がこの映画の主題なんですね。構成が巧みです。
ヒューの方は過去を自虐的に受け入れ、未来に期待していません。 一方ドリューは過去にこだわり、今を受け入れられません。
そんな2人が曲を作っていく過程で自分の過去をさらけ出し、弱さを見せ、お互いに相手を受け入れていきます。
結果、出来た曲は2人にとってかけがえのないものになった、と。
テーマ曲でもある「Way Back Into Love」がここで完成します。
この曲、実にいいんですよ。本編のドラマに応えるようにメロディーと詞に力があります。
この曲の完成度の高さがこの作品に大きく寄与しています。
しかし、この曲の持つ本来の力を映像的に見せ付けられるのはクライマックスまで待たなければいけません。
曲が完成したことで、2人はそれぞれ未来に期待し今を受け入れます。
ドリューはヒューの過去に自信を与え、ヒューはドリューに過去への決別の手伝いをします。
ちなみに、ドリューがヒューに自信を与える遊園地の余興のシーン、マネージャーさんがドリューに感謝する描写が素晴らしいです。
しかしその曲がアイドルのもとで売れ線用に今風のアレンジが施され(アレンジの下品さが素晴らしくいい(笑))、曲の持つ大事なものが失われてしまったとドリューは感じます。ヒューはビジネスと割り切りそれを受け入れようとします。 さぁ、どうなるのか?というお話です。
音楽を担当したアダム・シュレシンジャーはトム・ハンクスがマネージャー役を、バンドメンバーの彼女役をリヴ・タイラーが演じた『すべてをあなたに』の音楽も担当していて、「ファウンテインズ・オブ・ウェイン」というパワーポップバンドのメンバーです。このバンドの曲がまた甘酸っぱくて適度に歌メロガがポップでいいんですよね〜。懐かしさと優しさと甘さを兼ね備えた曲作りのうまさに定評があります。
始まってからしばらくは台詞に出てくる80年代ポップスターの名前にニヤニヤ。
ステファニーとか、デビー・ギブソンとか、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドだとか、ドリューのお姉さんがヒューに始めて会うシーンではバックで小さくリマールの「ネヴァー・エンディング・ストーリー」がかかってるし。
で、最後は泣きました。悲しくて泣くのではなく、うれしくて泣きました。
いや、実に素晴らしい。文句なしで傑作だと思います。見た後にこんなに心が温まる映画は久々でした。
これ、出来るだけ大画面で見ることをお薦めします。その理由はあとでネタばれと共に書きます。
小さな繰り返しギャグも利いています。 ドリューがヒューの家に来ると、いつも居間にあるピアノの上にカバンだの上着だのを無造作に置こうとするんです。それを一々ヒューがサッと取ってピアノに置かないようにするというギャグがさりげなくてとてもいい。この辺のセンスは60年代ロマンティック・コメディーの雰囲気があります。
ラストのヘイリー・ベネット演じるコーラのマジソン・スクェア・ガーデンでの大規模なライブシーンが演出、カメラワークともに大変素晴らしいです。
ちなみに無表情さが、現代っ子の何を考えているかわからない感を醸し出していたコーラ役のヘイリーは、現在デビューアルバムを準備中とのことです。08年公開予定の「college」というキューティー映画の出演も決まってるみたいですね。
ライブシーンに話を戻しますと、ここ、映画のクライマックスとしてもとても重要なので、思いっきりエキストラも入れて本当のライブのように撮ってます。ネットでエキストラの人が隠し録りしたライブ収録の音を聞いたのですが、思いっきり盛り上がってました。隠し録りしてたやつ、カップルで来てたみたいで、途中でキスしてやんの(音で分かるくらいだから、ほんと盛り上がりすぎだろ)(笑)
先に「大画面で見ることをお薦めします」と書いたのも、大音量、大画面でコーラのライブを体感したほうが、ラストの感動もより大きくなるからです。映画を観ている人がライブを体感できるような映像設計がされています。
まずはアリーナ席での、ライブが始まる前の客席のあわただしさと、客電が落ちて1曲目が始まる興奮の瞬間を実に見事に描いています。
これはカメラワークによるところが大きくて、あえて望遠ショットを使って客席でライブを見ているドリューた ち主要キャストのバストショットを撮っているんですが、これがライブの空間、空気感を表現しています。つまりは他の人たちの姿も画面に入れ込むことで、大人数の中の1人という雰囲気、ライブで一体になる感じが得られます。望遠を使うと被写体以外がいるようでいないようで、実はいる(どっちやねん)という映像になって臨場感が増すんですね。
逆にライブの最中にドラマとして見せるところでは通常のカメラレンズで撮って、じっくり表情を捉えています。この辺の演出設計がうまいです。 カット割りやカメラアングル、レンズの選び方は映画よりライブ収録の手法で、これがまたライブのリアリティーを生んでいます。
で、僕が大感動して涙が自然と止まらなかったラストのアレックス&コーラのデュエットによる「Way Back Into Love」ですが、ここ、意図したかどうか不明ですが、細かい描写が実に泣かせるんですよ…
曲が静かにピアノで始まり、ドラムがインして曲が走り出すところで、この曲を今風に糞アレンジ(笑)に加担した黒人ヒップホッパーがドラムを叩いて乗ってるしぐさを一瞬挿入します。ここ大感動しました。
映画では本来、この黒人が関わったアレンジ版「Way Back Into Love」でライブをやる予定だった設定です。それがアレックスの決心で本来のアレンジになったわけで、黒人は怒ってもいいはずなのに、原曲アレンジのドラムインで乗っている…。
つまり、この人も実は原曲を認めているという描写なんですね。
さらにボーカル2人が熱唱しているバックで、2人のギターリストがお互い顔を向き合わせて「うん」とうれしそうにうなずきながら演奏している描写があります。 演奏者であるこの2人もこの曲の良さを認めているわけです。脳内設定ですが「やっぱりこの曲にはこのアレンジだよね」と確認し合っているように思えました。ちなみに、このシーンの演奏者はみんな本当のミュージシャンです。
そしてカメラは客席にいるマネージャー、姉夫婦、観客たちへ…
この曲がどんどんみんなに受け入れられ、心に響いていく描写が続きます。
1つの曲がみんなに受け入れられていく描写で、ここまで素晴らしく演出された映画を僕は見たことありません。それくらい完璧でした。
これは映像も大事ですが、やはり曲自体の出来がとっても重要なわけで、どちらかが欠けてもこうは感動しません。
映像と音楽の相互作用が実にうまくいった例だと思います。
映画を見る前と見た後では聞いていたサントラの印象が全然変わりましたから。






