
『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープ演じる鬼編集長のモデルがアナとされています。原作者は元アナのアシスタントをしていた人ですから当然その上司のモデルはアナ、ということになるのですが、一応原作者は否定しているようです(笑)
そういえば、『プラダを着た悪魔』の映画化が決まった頃、「アナを恐れて多くのブランドが映画への衣装協力を拒否」というゴシップめいた話が流れてきたりもしました * 1
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自分はファッションについては全然素人もいいところですが、『プラダを着た悪魔』を見ていたおかげで「あ、ブックだ」「おぉ、これがランスルーか」と、ファッション業界のこと、VOGUEの人たちの仕事ぶりがある程度、ド素人ながら判りました。
ファッション業界のしきたりや用語については、『プラダを着た悪魔』を見ておくといいと思います。
販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2010-07-02)
定価:¥ 2,500 ( 中古価格 ¥ 770 より ) / Amazon価格:¥ 1,477
時間:110 分 / 1枚組 ( Blu-ray )
アナはファッション界に君臨して恐れられていますが、それもするべき仕事をしてちゃんと成果を出しているからこそ。
その辺りを映画では、20年来の戦友でもあるクリエイティブ・ディレクターのグレイス・コディントンが語ります。
このグレイス・コディントンが映画の主役として追っかけられます。
アナの凄さ、仕事ぶり、それに対する周りの反応は、この人を通じて観客に伝わる仕組みになっています。また、この映画の主軸である本の構成がどうなっていくのか、編集作業はどう決着がつくのか、というスリリングな展開も、この人が手がけた特集記事がどう扱われるのかを追っていくことでわかる仕掛けです。
VOGUEの誌面のページ割付作業がアナログ作業なのは意外でした。小さなページ写真をポートレートのように並べていくんですね。てっきり天下のVOGUEくらになると、壁一面モニターになっててDTPソフトから直でデータを出して、タッチパネルで並び変えるくらい最先端してると思ってたもので(笑)
でも、雑誌にしろ映画にしろ、何にせよ「全体を見渡し、構成要素を実際に触って並び替える」という作業はモニターでやるより実物でやった方が絶対いいんですよ。これは自分も経験があるので、よくわかります。
映画ではアナの娘が出てきます。彼女はキャサリンという名ですが、「ビー・シャファー 」という名で有名です。ちなみに、なぜ「ビー」なのかというと、アナが愛称ビーでキャサリンを呼ぶためです。ビーを見守るアナの目は仕事をしているときと違いとても優しいです。
この映画の中でビーは、お母さんのようにファッション雑誌の編集を目指すのか?という問いに「私は法律家を目指しているの。ファッション界は普通じゃない世界だと聞くわ」と答え、自分の意見をしっかり持った聡明な娘を『演じています』。
そう、演じているのです!
てめ〜、18歳で母親にくっついて社交界デビューして、2006年にTeen VOGUEでインターンして自信つけて他のとこで記事書いたら、記事の内容が酷くてボロックソに叩かれて「ジャーナリズムの道で生きるのはやめるわ〜」と発言し、その後ネットで色々スキャンダルかましまくってるくせに!お母さんと一緒にあちこちのパーティに出没して写真撮られまくってるくせに!(笑)
映画のイメージとは異なり、彼女はセレブのバカ娘「ビー・シャファー」としてゴシップ誌では有名な存在です。この映画ではそのイメージが全くありません。
編集作業は責任者としてのアナの的確で素早い判断と、質を高める努力をするグレイスのこだわりとのせめぎ合いで進んでいきます。しかし、アナといい、グレイスといい、女性うんぬん以前に仕事が出来る人は自分をきっちりと律していますね。
この手の映画の評はすぐに「女性らしさ」「憧れの職業、華やかな世界」とか書き散らして読者を白痴にしてしまいますが、そんな安っぽい言葉で済ませるにはもったいない映画です。
一流の仕事をするということがどれだけ厳しいものであるかを追っかけた作品であり、己で責任を持ちつつしっかり結果も出してきた人の仕事ぶりが、結果として一流と言われているだけであることを示します。そこに男も女もありません。華やかな世界のように見えて実際は非常に地道で厳しい世界です。
そしてブランド=VOGUEという名に甘んじていません。この映画に出てくる人たちはたぶん小さな無名の出版社でも同じことをしているでしょう。そう思います。
結果だけを見て憧れているようではダメです。作り出す努力を絶え間なくしている人が結果を勝ち取れるのです。この映画から何かを受け取れた人だけが次のステップに進むことが出来るんだと思います。
さて、この映画の展開、締切りまで後5日というときに急に追加撮影が発生してしまいます。このエピソードがラストに向けてのクライマックスとなります。
ここで登場するカメラマンが、映画版『セックス・アンド・ザ・シティ』の中で、キャリーの花嫁衣裳を撮影するシーンに自身役で登場していた超一流カメラマン、パトリック・デマルシェリエ。
彼は世界で一番時給が高いカメラマンとして有名でした。その価格、当時で1時間500万(!)。今もでしょうか?もしそうだとしたら締切りギリギリで彼を投入したVOGUEの意図がわかります。「高くても確実な結果がほしい」ということなのでしょうね。
Patrick Demarchelier: Photographs
著者/訳者:Patrick Demarchelier
出版社:Bulfinch (1998-06-01)
定価:¥ 2,965 / Amazon価格:¥ 21,526
[元画像(78KB)]で、パトリックの現場でのアイディアがこれまた小粋でユニーク。
この映画のドキュメントスタッフをモデルとして使うんですね。しかもカメラマンとモデルを別々に撮影してその場でデジタル加工してお互いの位置を修正し仕上げていきます。
これが映画的にもとてもいいサプライズになっていて、9月号の編集作業の締めくくりのエピソードとして、現場も映画も楽しい雰囲気にしてくれます。
しかもこの写真のある部分を巡って、またまたアナとグレイスがせめぎ合います。
1枚の写真に対する2人の考え方の違いも判って面白く興味深いエピソードになっています。
この映画を見る人はスタッフロールのラストのラストまでちゃんと見てくださいね。
最後の最後、パトリック・デマルシェリエが上記の撮影現場で撮った、VOGUEでは使っていないドキュメントスタッフ一同の写真が出ます。この写真が実に実に素晴らしいんですよ。とても小粋なラストでした。
ちなみに、これが実際発売されたVOGUE2007年9月号表紙です。
